FC2ブログ

吸血鬼10

2015年1月5日ですね。
語呂合わせで1時5分にUPしてみましたw
のんびり更新ですが、皆様今年もよろしくお願いいたしますm(__)m



ベッドに入った夕鈴は、李順から聞いた話を頭の中で何度も反芻した。
「拒絶って……どうすれば出来るのかな……」
――嫌いって思えばいいのかな?
ベッドの上でゴロリと横向きになった夕鈴の目は、知らず知らず先ほど李順がいた場所へ向けられた。
そのまま視線を巡らせると、まだ生き生きと咲いている紅い薔薇で目が止まる。
「そう言えば、男の人からお花を貰ったのって初めてかも」
――思い返してみればこの数日間、家まで送ってくれたりバイト先まで迎えに来てくれたり……
「事情はどうあれ親切な人、よね?」
人じゃないけど、と夕鈴は自分の考えに突っ込みながら、ゆるゆると眠りの世界へと落ちて行った。


夢の中で、夕鈴は見知らぬ場所を歩いていた。
鬱蒼と茂る森の中、木漏れ日の当たる場所には薔薇が咲き乱れていた。
白く可憐な薔薇の花は無数に咲き誇り、辺りには花びらがまるで敷き詰めたかの様に散らばっていた。
――ここ、どこかな
夕鈴が薔薇の咲く方へ足を向けると、見た事のある後ろ姿が目に入った。
――黎翔さん?
無意識に足を止めた夕鈴の目に、もう一人の後ろ姿が映る。
艶やかな黒髪を二つに結った、華奢な体つきの女性。
その女性が黎翔に何かを話しかけた。
黎翔に顔を向けた時に見えた、女性の幸せそうな微笑み。
――可愛い人……
李順の言っていた『ご令嬢』とはこういう人の事かしらと思った夕鈴の胸が、ちくりと痛んだ。
――ん?
今まで経験した事の無い不思議な痛みに、夕鈴は首を傾げた。
夕鈴から黎翔の顔は見えないが、自分に向けられた様な穏やかな笑みを、あの女性にも返しているのだろうか。
そう思った時、再び夕鈴の胸が先程よりも強く痛んだ。
『結婚相手を同族から選ぶ様に――』
李順の声が甦る。
――それって、つまり他の人とお幸せにって事よね?
夕鈴の視線の先の二人は、ゆっくりと自分から遠ざかって行く。
――これが二人の……私達の為……?
夕鈴は胸の中に、もやもやした物が渦巻いている様な、嫌な気分に襲われた。
――私達の為……これで良いのよね?
これが最善なのだと自分に言い聞かせてみたものの、その考えとは裏腹な思いは夕鈴に一つの名前を叫ばせていた。
「っ!黎翔さんっ!!」


自分の叫び声で目を開けた夕鈴は、はぁはぁと息を切らせながら、先程見た光景が自分の見た夢だった事をぼんやりと理解した。
「あ……なんだ……夢?」
「――どんな夢?」
低い静かな声に驚いた夕鈴が飛び起きる勢いで声のした方を見ると、静かな笑みをたたえた黎翔がベッドの端に腰掛けていた。
「な、な、な」
「何でここにいるのかと言いたい顔だね」
くすりと笑った黎翔を、夕鈴はキッと睨み付けた。
「あ、当たり前ですっ!こんな夜中に!!」
「――呼ばれたから」
「へ?」
その時やっと夕鈴は、自分の手が黎翔に握られている事に気付いた。
「手、放してください」
「もう少し、このままで――僕を呼んだのは君だよ」
「あ……夢の中で?」
やっぱり声に出てしまったのかと、夕鈴は急に恥ずかしくなってきた。
「僕の夢を見てくれるのは嬉しいけど、次は起きている時に呼んで欲しいな」
指先に口付けしながら言う黎翔の台詞に、夕鈴の顔がカッと赤くなった。
「ご、ごめんなさい。寝言で呼んだなんて……」
「で、どんな夢だったの?」
「それは……」
夢の内容を思い出した夕鈴の胸が、またツキンと痛んだ。
「……黎翔さんが可愛らしい女性と一緒にいて……」
「――それで?」
「それが私達の為なんだろうけど……何だかもやもやして……」
「――何故それが僕達の為?」
夕鈴は自分を見つめる黎翔の紅い瞳が、一層色を深めた気がした。
「だって、私達は住む世界も違うし……結婚相手は同族から選んだ方が……」
「そう言う様にと李順に言われたか」
感情を抑えた様な低い声に、夕鈴は息を飲んだ。
「――夕鈴は私を嫌ってはいないと言った。あれは嘘か?」
「う、嘘なんか」
「では何故、他の女性と結婚する事が私の為だと言う?」
黎翔の強い眼差しから逃れる様に、夕鈴は顔を背けた。
「夕鈴、君が本当に私を拒むなら、ただ一言『嫌いだ』と言えば良い。そうすれば私はもう二度と君の前には現れない」
「え?だって……」
「君を花嫁にしたいと思うのは私の我が儘だ。君が人間らしく生きたいと願うなら――私はその願いを聞き入れるべきだろう」
夕鈴はそっと黎翔の顔を見た。
それは今まで夕鈴が見た事のない、何かを諦めた様な儚げな笑みだった。
「何故、私の願いを?」
「――愛しているから。愛しい者の願いならどんな事でも叶えてやりたい」
黎翔はもう一度、今度は夕鈴の手の甲に口付けを落とした。
「さようなら、夕鈴」
「ま、待って!違うの!」
背を向けた黎翔の手を、夕鈴はしっかりと掴んだ。
「確かに、同族との結婚を薦める様にと李順さんから言われました。でも、夢で黎翔さんが他の女性といて、それがすごく……」
夕鈴の目から涙がぽろぽろと零れる。
黎翔はゆっくり振り返ると夕鈴の前に跪き、両手で夕鈴の頬を包んだ。
「それがすごく……?」
「すごく、イヤで……でも何でか自分でも分からないの」
黎翔は夕鈴の顔に自分の顔を寄せると、チュッと音をたてて涙を吸った。
「――分からない?」
「分からないけど、胸が痛むし、もやもやするの」
「――僕と一緒にいたい?」
先程とは反対側の涙も吸われ、夕鈴は沸騰しそうな頭で考えた。
「そう、なのかも」
「かも、かぁ」
クスクス笑いながら黎翔は、夕鈴の鼻の頭にも口付けた。
「夕鈴、覚えておいて。僕は他の誰かを娶る気は無いんだ。君だからこそ花嫁にしたいと思ったんだよ」
「……即位する為じゃなく?」
「それも李順から聞いたのか……即位なんて、他の王族に任せたって良いんだ」
黎翔は夕鈴をぎゅっと抱き締めると、その細い首筋に口付ける。
「で、でも、王様になりたくないの?」
「王という地位よりも君の方が魅力的だな」
「――それでは困ります」
「李順……不粋な真似を」
いつの間にか自分の背後に立っていた李順に目を向ける事も無く答えた黎翔は、夕鈴の耳に口付けてからその身を離した。



SNS初出2015年1月4日
スポンサーサイト
プロフィール

*へもへも*

Author:*へもへも*
『狼陛下の花嫁』の二次創作小説がメインです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
お客様数
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR