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君の世界を僕にもわけて

診断メーカーで、お題が出るパターンがありまして。
「黎翔夕鈴へのお題は『君の世界を僕にもわけて』です。」
と出ましたので書いてみました。



白陽国に珍しく雪が降った。
見慣れたはずの後宮の庭も白く染まり、雪の害が出なければ良いがと黎翔は思った。
夕鈴の自室までの回廊も雪が吹き込み、滑りやすくなっている。
無論、黎翔が通る前に女官達が綺麗に雪を掃除したが、それでも風に舞う粉雪は次から次へと降りてくる。

「妃よ、今戻った」
「お帰りなさいませ」
頬を染め出迎える夕鈴の笑顔に、黎翔の心が温かくなる。
「君の笑顔を見ているだけで、春を迎えたような気分になるな」
「――は?」
首を傾げる夕鈴を抱き締め、その肩に顎を乗せた黎翔は
「我が妃は温かいな」
と夕鈴の耳元で囁いた。
「へ、陛下、お体が冷えてませんか?今お茶をお淹れしますから」
腕の中から逃げ出そうとする夕鈴の耳たぶに、黎翔が軽く唇を付けると夕鈴は小さく叫んで体を離した。
真っ赤な顔で睨む夕鈴にクスリと笑み、黎翔は侍女達を下がらせた。
「陛下!!やり過ぎですよ!!」
「ちょっと唇が触れただけだよ」
にこにこ笑いながら長椅子に座った黎翔にお茶を差し出すと、夕鈴は頬を染めたまま納得いかない様な顔で椅子に腰を下ろした。
そして自分のお茶を一口飲むと、ふと心配そうに黎翔に尋ねた。
「でも陛下、本当にお体が冷えているようでしたよ?回廊が寒かったのではないですか?」
「雪が吹き込んでいたからね」
「え、雪が?」
目を丸くする夕鈴に、そう言えば降り出したのは夕方からだったかと黎翔は気付いた。
「雪は雨と違って音がしないからね。部屋の中にいたら気付かないかな」
「今降ってるんですか?見ても良いですか?」
子供の様にはしゃぎソワソワし出した夕鈴に
「風邪をひくといけないから少しだけね」
と黎翔は苦笑した後、侍女を呼び夕鈴に厚手の上着を着せた。

心配する侍女達を下げ、寄り添って回廊へ出た二人の前に白い道が広がる。
「わぁ……まるで敷物を敷いたようですね」
「滑るから気を付けて」
差し出された黎翔の手に自分の手を重ねた夕鈴は、目を輝かせ一歩踏み出し、感触を楽しむ様にゆっくり歩き始めた。
「庭も真っ白ですね」
「ああ……解けるまで数日かかりそうだな」
「綺麗ですね」
夕鈴のその一言に、黎翔は驚いた顔をした。
「――陛下?」
「あぁ、いや、綺麗か……そうだな」
降りしきる雪はいつの間にか、粉雪から牡丹雪に変わっていた。
「まるで花びらみたいだと思いませんか?」
うっとりと雪を見つめる夕鈴の横顔を見ていた黎翔は、おもむろに夕鈴を抱き上げた。
「陛下!?」
「同じ景色を見ているはずなのに、感じる事は違うものだな」
積もった雪のおかげで周りは薄明かるい。
細い枝に積もった雪が、自分の重さに耐えきれなくなって落ちる軽い音がどこからか聞こえる。
黎翔は夕鈴を抱き上げたまま回廊を歩き始めた。
やがて雪が吹き込んでいない場所を見付けた黎翔はそこに腰を下ろし、夕鈴を自分の膝の上に座らせた。
「――君にはどんな世界が見えているのかな」
「え?」
黎翔は夕鈴の頬を両手で包むと顔を自分に向かせ、目を瞑り額と額を合わせた。
「僕も君が見ている世界を見てみたい――君の世界を僕にもわけて」
「私の……世界?」
夕鈴の小さな呟きに黎翔は目を開き、軽く微笑んだ。
「……陛下も、いらっしゃいますよ?」
「――え?」
黎翔は額を離し、言葉の意味を探る様に夕鈴の顔を見た。
「私の世界には、陛下もいらっしゃいます」
頬を染め、柔らかく微笑む夕鈴を、黎翔はまるで壊れ物を扱うかの様にそっと抱き締めた。
「僕も君の世界の住人か……どんな『僕』が住んでいるのかな」
黎翔の腕の中で、夕鈴は恥ずかしそうに俯き小さな声で言った。
「強くてかっこいい、でも優しい王様です」
「――優しい?」
黎翔の意外そうな声に、夕鈴はそろりと顔を上げた。
「僕を優しいなんて言うのは君くらいだよ」
「それは……陛下が皆の前では狼陛下の演技をしているから……」
黎翔は口の端だけで笑むと、夕鈴の髪に口付けた。
「君の世界の僕だけが優しければ良いよ。他の者は知らなくて良い……」
「陛下……」
黎翔のどこか切なげな微笑みに、夕鈴の胸にも切ない気持ちが広がる。
夕鈴は黎翔の胸に自分の額をこてん、と付けると穏やかな声で言った。
「陛下の世界の『私』も、陛下だけが知る私ですね」
「――そうだね。僕だけの夕鈴だね」

白く、寒々とした風景に包まれているはずの二人だけの世界が、いつの間にかどこか温かく柔らかな色に彩られ始めていた。
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バレンタイン

SNSでの36000hitのキリリクです。
もし白陽国にバレンタインがあったら、なお話です。



「陛下、明日お休みを頂けませんか?」
「――何故?」
夜の後宮で、思い詰めた顔の夕鈴が放った一言に、黎翔は静かな声で問い返した。
「うっ……あの、明日はバレンタインですよね?青慎の事が心配で」
黎翔は夕鈴の言葉に首を傾げた。
「何故バレンタインだと青慎くんが心配なの?」
「あの子、人が良いから断れなくて……毎年すごい数のチョコを受け取っちゃうんです。中には彼女になりたいって子もいて……」
「バレンタインのチョコってそういう物でしょ?」
「でもっ!!」
夕鈴はぐっと拳を握りしめ力説する。
「あの子はまだ13歳ですよ!?彼女とか早すぎます!!」
そうかなぁと苦笑しながら、黎翔は条件を出した。
「僕と一緒に行くなら下町へ行っても良いよ」
「――へ?何を……陛下は明日もお忙しいはずですよね?」
「うん、だから早く戻って来ようね」
にこにこ笑いながら言う黎翔に、やっぱり一人で行くのは無理かしら、と夕鈴は諦め気味にお茶を飲んだ。


「ただいまー!!青慎いる?」
「あれ?姉さん?」
奥から出て来た青慎は、門の所にいる夕鈴を見て不思議そうな声を出した。
「どうしたの?急に」
「今日一日だけお休みが取れたから、ちょっと帰ってみたの」
「李…翔さんも一緒に?」
少し怪訝そうに自分の後ろに立つ人物を見ている青慎に、夕鈴は慌てて手を振り言った。
「り、李翔さんはお仕事のついでで、そう、この辺にちょっと用事があったから、寄ってもらっただけなの!!」
「……そっか、分かったよ」
にこっと困った様な笑顔を見せる青慎を、夕鈴は思わず抱き締めた。
「青慎、今日は美味しいご飯作るからねっ!!一緒に買い物に行こ?」
「う、うん」
そのまま青慎の腕を引き、歩き始めた夕鈴から少し離れた李翔は、小さく呟いた。
「――浩大、昨夜言った通りに」
「あいよー」
どこからか聞こえた返事に軽く笑んだ李翔は、足早に夕鈴と青慎の後を追った。

「おばさん、これとこれ二つ買うからちょっとまけて」
「あれ、夕鈴ちゃん久しぶりだねぇ。お得意様だからね、特別にまけてあげるよ」
明るい調子で言いながら、店のおかみさんは品物と一緒にチョコを渡してくれた。
「これは青慎くんにね。いつも買いに来てくれてありがとう」
「そんな…こちらこそオマケして頂いたりお世話になっているのに……ありがとうございます」
はにかんだ笑みを浮かべチョコを受け取る青慎を見ながら、まぁこの場合は仕方ないわよねと夕鈴は自分を納得させた。
他の店でもチョコを渡され、遠慮しながら受け取る青慎は、夕鈴が険しい顔で自分を見ている事に気付いた。
「姉さん?どうしたの?」
「あ、ううん何でもないの。ただ、お返しが大変そうだと思って」
「うーん…でも今年は義理チョコばかりだから、気分は楽だけど」
そう言えば、と夕鈴も思った。
いつもだと、そこかしこで待ち伏せしていた女の子達から『本命です』といかにも手作りな物や、高級そうな物を渡されるのに今年はそれがない。
何だか拍子抜けね、と夕鈴が軽い溜息を吐くと、するりと李翔が腕を絡め手を握ってきた。
「へ…李翔さんっ!?何ですか!?」
「僕もチョコ欲しいなーって思って」
「……は?」
「夕鈴、青慎くんの事ばかり気にかけていて僕へのチョコ忘れてない?」
拗ねた口調の李翔の台詞に、この人は一体何を言い出したのかと夕鈴の目が丸くなる。
仮にも一国の国王が、チョコ一つで拗ねるなんて聞いた事もないと夕鈴は李翔を見上げた。
「李翔さん…チョコ欲しいんですか?」
「夕鈴からならね」
「ぎ、義理でも?」
かあっと顔を赤く染めながら尋ねる夕鈴に、李翔は残念そうな声を出す。
「えー義理なの?」
「当たり前ですっ!!」
「――他に本命がいるの?」
眼鏡の奥の目が冷たい光を帯びた様に見えて、夕鈴は慌てて答えた。
「いっいる訳ないじゃないですかっ!!」
「じゃあ僕が本命でいいでしょ」
「そういう問題じゃないです!!」
道の真ん中でわぁわぁと騒ぐ姉と李翔から離れた青慎は、先に帰りたいなぁと思いながら呆然と二人を眺めていた。
「よぉ青慎」
ポンと頭に手を乗せられた青慎が振り向くと、そこには几鍔が立っていて、呆れた様に
「――何だアレは」
とまだ騒いでいる二人を見ていた。
「お前ら痴話喧嘩もいい加減にしろよ」
几鍔の呼び掛けにハッとそちらを見た夕鈴は
「痴話喧嘩なんかしてないわよっ!!」
と几鍔を睨み付けた。
「……まぁいいけどな。俺はそっちの役人に用があるんだよ」
「――僕に?」
つかつかと二人のもとに歩み寄った几鍔は、李翔に綺麗な装飾が施された箱を差し出した。
「さっきばーさんがテメェを見かけたらしくてな。これを渡してくれとよ」
李翔が箱を受け取ると、几鍔はいかにも嫌そうに言った。
「本命チョコだと」
「はぁー!?ちょっと、おばば様何考えてんのっ!?」
「俺に言われても知るかよ」
李翔は二人のやり取りを聞きながら手の上の箱をしばらく眺めていたが、口の端だけで薄く笑うと
「ありがたく頂くよ。おばーさんによろしくね」
と几鍔に言った。
「え?受け取るんですか!?」
夕鈴の驚いた声に、李翔は穏やかに答えた。
「だって本命って言われて悪い気はしないでしょ?夕鈴はくれないみたいだし」
「っ!!あげないとは…!!」
「くれるの?」
笑顔の李翔に顔を覗き込まれた夕鈴は、真っ赤に染まった頬を両手で押さえ後ろを向いた。
「よ、用意はしてありますっ……その、いつもお世話になってる皆へ、ですけど」
「皆へかぁ……いいよ、それでも楽しみにしてる」
――陛下へのチョコだけは特別だなんて言える訳ないでしょー!!
そんな夕鈴の心の叫びを知ってか知らずか、嬉しそうににこにこと笑っている李翔を見ていた几鍔は、眉間にシワを寄せ腕を組んだ。
「ま、今年はどういう訳だかチョコを盗まれてる奴もいるみたいだから、気を付けるこったな」
「え?なにそれ」
几鍔からの思いがけない言葉に、夕鈴は顔を上げた。
「女共が言ってたんだよ。本命チョコが盗まれたってな……一人二人じゃないらしいぜ」
「ひどっ…犯人の目星は?」
「それが全然。全く分からねーってよ」
二人の会話を聞きながら、李翔は青慎と目が合うとにっこりと微笑んだ。
その笑顔に何故か背筋が寒くなるのを感じながら、青慎も曖昧な笑みを浮かべた。

屋根の上には、お腹いっぱいチョコを食べて幸せそうな隠密が一人。
そんな今年のバレンタイン。



※リクエスト内容は
『バレンタインにもてまくりの青慎が心配な夕鈴が無理を言って下町に降りる。例年以上に疲れる青慎と暗躍する優秀な隠密』

SNS初出2014年2月14日

教師と生徒

↓毎度おなじみの診断メーカーです。

あなたは1時間以内に4RTされたら、教師と生徒の設定でいきなり告白されて戸惑う珀黎翔と汀夕鈴の、漫画または小説を書きます。

…30分で4RT達成しました(笑)



「――それで、質問は何かな?」
柔らかな夕日が差し込む窓を背にした黎翔は、目の前の生徒、汀夕鈴に優しく声をかけた。
授業が終了し、黎翔が教室を出ようとした時に意を決した様な表情で
「先生っ!!質問があるので放課後よろしいですか!?」
と言ってきた時の夕鈴の勢いの良さは今は無く、もう長い事うつむいたままだった。
黎翔は何度目かの同じ台詞を口にしながら、首を傾げた。
「質問って、なに?今日の授業で分かりにくい所でもあったかな?」
「――先生……」
やっと夕鈴が口を開いた事に安堵した黎翔は、ほっと息を吐きながら、先を促した。
「うん、何かな?」
「先生は、その……こ、恋人とかいらっしゃるんでしょうか!?」
「――え?」
思いがけない夕鈴からの『質問』に、黎翔は言葉を詰まらせた。
「わ、私、先生のことが……」
「えーと、これは何かの冗談かな?」
苦笑しながら言う黎翔に、夕鈴は真剣な表情で
「冗談なんかじゃありませんっ!!私、先生が好きなんですっ」
と勢い良く告げた。
「――好き?」
黎翔から低い声で聞き返された夕鈴は、真っ赤な顔でこくりと頷いた。
「僕達教師にとって、君達生徒はいわば商品だ。大切に三年間教育し送り出す」
黎翔は夕鈴に教え諭すような口調で続ける。
「その商品に手を出せるとでも?」
「え、手って……」
黎翔は夕鈴に一歩近付くと、夕鈴の長い髪を一房指に絡めた。
「告白して両想いになっても、男が何もしないと思っているのかな?」
髪に口付けられ、夕鈴は頬がカアッと熱くなる。
「わ…私そこまで考えていなくて…」
「――だろうね」
黎翔はクスッと笑うと指に絡めていた髪をするりと解き
「さぁ、もう帰りなさい」
と夕鈴に背中を向けた。
その黎翔の笑いに、夕鈴は自分が子供扱いされたような気分になり腹が立ってきた。
「黎翔先生!!」
夕鈴の声に振り向いた黎翔の胸に飛び込んだ夕鈴は、背中に手を回しギュッと抱き締めた。
「先生、私…本気ですからっ」
夕鈴の体が小さく震えているのに気付いた黎翔は、上を向くとフーッと長く息を吐いた。
「――汀、いや夕鈴。じゃあ誰にも内緒で付き合おうか?」
夕鈴が目を丸くして黎翔を見上げると、黎翔も夕鈴の背中に手を回し抱き締めた。
「本当は、ずっと狙ってたんだ」
「――え?」
「卒業したら打ち明けようと思っていた」
黎翔は夕鈴の首筋に顔を埋め耳元で囁いた。
「好きだよ、夕鈴。君が入学してきた時から」
「え、えぇぇっ!?」
黎翔は、信じられないといった様子の夕鈴を真正面から見つめると
「これからよろしくね。僕の可愛い兎さん」
と夕鈴の額に唇を付けてからニヤリと笑った。
その表情は夕鈴が今まで見ていた人畜無害そうな『黎翔先生』のそれとはあまりにも違いすぎ、もしかして早まった?と思いながら、夕鈴は黎翔からの口付けを今度はまぶたに受けた。
プロフィール

*へもへも*

Author:*へもへも*
『狼陛下の花嫁』の二次創作小説がメインです。

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