兵士と捕虜な関係

以前もやった診断メーカーで、こんなお題が出ました↓
あなたは15分以内に9RTされたら、兵士×捕虜の設定で公衆の前で告白する珀黎翔と汀夕鈴の、漫画または小説を書きます。

と言う訳で←



「――李順」
「はい」
黎翔は窓の外を見たまま話を続ける。
「今日捕えた捕虜はあれか?」
「はい」
民族衣装を身にまとい後ろ手に縛られた一人の小柄な兵士が、黎翔の部下によって収容所に連れて行かれようとしていた。
「――ここへ連れて来い」
「…は?」
「面白そうだ」
にやりと笑った黎翔の真意は分からないものの、李順は上司命令に従うために部屋を後にした。
――退屈しのぎにはなるかな?
黎翔はわずかに口角を上げ兵士の姿を見続けている。

少数民族との間で、土地の併合についての意見が対立している辺境の駐屯地。
長く続いた睨み合いの末に始まった戦闘は、戦いと言うよりも小競り合いといったところだ。
元来穏やかな気性の少数民族は、こちらが良い条件を出せば併合を拒まないのではないか、と黎翔は思う。
――本国の上層部は石頭揃いだな…
力で押さえ付けようとするから力で反発される。
戦わずに取り込む方が、後々の事を考えると得策ではないか、と黎翔には思えた。


「失礼します」
戻って来た李順の背後にはあの小柄な兵士と、黎翔の部下が立っていた。
「――方淵、お前は戻れ」
「は?しかし…」
「戻れ」
方淵は眉間にシワを寄せながらも、兵士の腰に回した綱を李順に渡し、礼を執り部屋を出て行った。
「――さて、名前は?」
「…お前がここの隊長か?」
顔を上げた兵士は真っ直ぐに黎翔を見ると、そう尋ねた。
「私に質問するのは、私の問いに答えてからにしてもらおうか」
わずかに口角を上げ低い声でそう言う黎翔の顔は、目深に被った制帽の為に兵士からは良く見えない。
「汀…青慎…」
「――違うな」
カツカツと足音を響かせ兵士の前に立った黎翔は、兵士の顎を捕らえ上向かせた。
「女、だろう?」
「…っ!!」
「――名前は?」
兵士は自分を見下ろす黎翔の瞳を見て息を飲んだ。
「…その瞳の色…まさか、戦場の鬼神?最近は姿を現さないから死んだものと…」
「あぁ、最近はデスクワークが忙しくてね」
制帽のつばを親指で押し上げた黎翔は妖艶な笑みを浮かべ、目を瞠る兵士を探るように見た。
「ですから戯れに最前線に行くのはお止め下さいと…」
と溜息を吐く李順の言葉を聞き流し、黎翔は兵士にもう一度尋ねた。
「いい加減に名前を教えてくれないか?」
ふいっと横を向く兵士に、ふうん?と楽しそうに呟いた黎翔は、兵士の民族衣装のシャツのボタンを一つ外した。
「なっ…何を!?」
「素直に答えないなら体に聞くしかないだろう?」
黎翔は長い指で兵士の首筋をたどると、その首にかかる銀色に輝く鎖を引いた。
チャリッと軽い音と共に、この民族が身に着けるお守りが現れ、黎翔はその裏面に目を走らせる。
「――これも汀青慎と刻んであるな…」
納得のいかない表情で、黎翔はもう一つボタンを外す。
「や、止め…!!」
「――男なら平気だろう?」
くっと唇を噛む兵士の赤く染まった頬を眺めながら、黎翔は薄く笑んだ。
もう一つボタンを外そうとした時、兵士がたまらず声を上げた。
「汀、夕鈴!!あなたの言う通り女ですっ」
「もう少し抵抗しても良かったのだが……夕鈴、か。青慎とは誰だ?」
「私の…弟です」
まだ少年だろうに、と苦々しい口調で言う黎翔を、夕鈴は驚いた顔で見た。
「――何だ?私は弱い者を嬲る趣味はない」
「だったら…この土地から撤退して」
「それは無理だな。私はこの駐屯地を任されている身……私の一存で撤退する訳にはいかない」
黎翔の冷たい響きを含んだ声を聞いた夕鈴は、がっくりとうなだれた。
そんな夕鈴の様子を見下ろしながら、黎翔は夕鈴の被っている布を取った。
ふぁさっと長い栗色の髪が広がり落ち、その様子に黎翔が思わず見惚れていると、夕鈴がゆっくりと顔を上げた。
涙をたたえ潤んだ瞳が真っ直ぐに黎翔を見つめる。
そして夕鈴の髪の上部にさされている装飾品の模様に、黎翔は見覚えがあった。
――あれは確か……
「――夕鈴、君の親は地位ある人間か?」
「お、や?父は部族長です……今指揮を取っているのは父です」
「指揮官、そして部族長の娘か…」
やはり部族長の家系の模様かと思った黎翔は、しばらく夕鈴の顔を見つめたまま何事かを考えていた。
「――李順」
「はっ」
「この娘を見られる姿にしてくれ」
「は?隊長、一体何を…?」
意味ありげな含み笑いを見せる黎翔に、李順は何か嫌な予感を感じつつも従う他なかった。


それから少し後、駐屯地の中心にある広場には緊急召集をかけられた黎翔の部下達が集まっていた。
前に立つ黎翔に皆の視線が向けられている。
とそこに、一人の女性が李順と共にやって来た。
この地の色鮮やかな民族衣装、高く結い上げられた長い髪には薄いベールがかけられ、歩く度に身に着けた装飾品が軽やかな音をたてる。
「隊長、お連れしました」
「あぁ、ご苦労だったな」
黎翔はその女性の手をとり己に引き寄せると
「見違えたな。想像以上だ」
と小声で耳打ちした。
訳が分からない顔で自分を見上げる夕鈴に微笑むと、黎翔は自分の前に整列している部下達に向かって声をあげた。
「この女性はこの地の部族長の娘だ。私は彼女を娶る事にした。よってこの地での戦闘は終了とする」
部下達から一斉に驚きの声や息を飲む音が発せられ、やがてざわめきが起こり始めた。
そして黎翔の隣に立つ夕鈴も、その思いもよらない言葉に黎翔に詰め寄った。
「な、何を!?娶るって…!!」
「君の望みは我が軍の撤退だろう?こうすればもう戦闘は起きない」
「でも、それじゃ…私達に奴隷になれとでも?」
黎翔は柔らかな笑みを夕鈴に向ける。
「いや、君以外の者達の生活は変わらない。戦闘が無くなるだけだ」
「私、以外?」
眉根を寄せた夕鈴の腰に手を回し、自分へ引き寄せた黎翔は夕鈴の額に唇をつける。
「――君は私の花嫁だ。逃がしはしないから覚悟しろ」
「なっ…何を!?」
「この地を手に入れた暁には、私がこの地を治めるという約束を本国と交わしてある。私と共に治めないか?」
夕鈴は信じられないといった顔付きで黎翔の言葉を聞いていた。
「この地を私よりよく知っている君が主導権を握っても良い」
「そんな…都合の良い話が…?」
「――君を見た時から、地位や権力よりも君が欲しくなった…ただそれだけだ」
言い終わらないうちに黎翔は夕鈴を抱き上げると、その耳元で囁く。
「まずはお父上に、結婚の許しをもらいに行こうか」
「わ、私はまだ納得していませんっ!!」
「――諦めろ」
顔を真っ赤に染め、自分の腕の中で暴れる花嫁の姿を見ながら、黎翔は心からの笑みを浮かべた。



SNS初出2013年12月7日
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冬の過ごし方

※本物夫婦設定



朝、小鳥のさえずりに目を覚ます。
朝日が射し込む窓に目をやり、今日も凛とした冷やかな空気に身がすくむ。
起きなきゃと思う反面、この温もりから離れたくないと無意識に掛け布の中で身動ぎする。

すると後ろから長い腕に絡めとられ、耳のすぐ後ろで囁かれた。
「おはよう夕鈴。今朝も早起きだね」
「起きてらっしゃったんですか?」
自分の腹の前で組まれた手にそっと手を添え、私は聞き返した。
「今、起きた」
そう言いながら私の髪に顔をすり寄せて来る陛下は、まるで甘える猫のようだ。
「昨夜も遅いお戻りでしたよね?まだ眠いのでは?」
「んー…少し」
ひとしきり私の髪で遊んでから、陛下はチュッと音をたてて私の首筋に唇をつけた。
「冬だからね、冬眠したくなるのかも」
その眠そうな物言いに、私はクスクスと笑ってしまった。
「――何?」
「狼は冬眠しませんよ?」
ん、と眠そうな声で短く返事をした陛下は、ぎゅっと私を抱き締め呟いた。
「今日も寒いな…」
「温かいお茶でもお淹れしましょうか?」
「お茶よりも……夕鈴が温めてくれる?」
へ?と思った時には体をくるりと回転させられ、背と腰に手を回された。
向き合う形で抱き締められ、私は陛下の胸に頬をつけた。
「やっぱりこの方が良いな。夕鈴は温かいね」
夜着がいくぶんはだけている為に、私の頬に陛下の胸の温もりが直に伝わる。
そのひんやりした感触に、私も陛下がしているのと同じように広い背中に腕を回し、ぎゅっと抱き付いてみた。
「あ、温かいですか?」
「――うん、とても」
かあっと頬が火照るのを自分でも感じる。
本物の夫婦になった今でも、自分から何かをするのはとても恥ずかしくて勇気がいる。
陛下もそんな私の事を理解してくれていて、たまに私がこうして自分から行動すると、すごく嬉しそうな顔をしてくれる。
「――狼は冬眠しない、か。でも巣ごもりくらいはするかな?」
「…陛下?」
見上げると、そこにはやはり嬉しそうに微笑む陛下の顔。
「寒い時には、狼も僕達のように仲間と身を寄せ合うのかな」
「……そうかもしれませんね」
つられて頬が緩んだ私の額に、陛下が口付けを落とす。
「でも、僕の腕の中にいるのは可愛らしい兎だね」
「ご不満ですか?」
「まさか」
口の端で軽く笑った陛下が、体を起こし私の上に覆い被さった。
「こんなに美味な兎も他にいるまい」
そのまま私の首筋を唇でたどりだす陛下に、私は慌てて尋ねた。
「へっ陛下!!もう朝議に行かれるお時間では!?」
「まだ大丈夫だ」
陛下の大きな手が私の体の線をなぞる。
「っ!!もうっ!!陛下ダメですっ」
「――夫婦なのに?」
どこか楽し気な口調で聞き返す陛下の、不埒な動きをするその手をパシッと叩き私は言った。
「夫婦でも、けじめというものがあります!!妃に溺れてるなんて言われないようにしっかりお仕事なさって下さいっ!!」
「たまには溺れてみたいけどなぁ」
クスクス笑いながら再び抱き締めてくる陛下の腕の中で、温もりにすっぽりと包まれ心が安堵する。
「……私の方が陛下に溺れているのかも」
思わずポツリと漏らした本音に、陛下が息を飲む気配がした。
「ずるいよ、ゆーりん」
「え?」
「そんなに煽るような事を言うくせに、手を出すと怒るんだから」
「あ、あお…っ?そんなつもりじゃ」
必死に弁解しようとワタワタし出した私の頬に、ぺたりと自分の頬を押しあてた陛下は
「分かってるよ」
と言って私の頭を軽くぽんぽんと叩いた。
「さて、働き者の妃を見習って私も起きるとするか」
「あ、あの…陛下?」
「うん?」
私は陛下の首に腕を回し、頬にそっと唇をつけた。
「お…お仕事が滞りなく進むように、その、おまじないです」
ぱっと体を離した私の顔を、頬を押さえた陛下は意外そうな顔付きで見ていたけれど、やがてにっこりと微笑みながら言った。
「――ありがとう。早く戻って来るよ」
やっぱり陛下には私の考えなんてお見通しなのね、と少し恥ずかしく思いながら、私は陛下に精一杯の笑顔を向けた。



SNS初出2013年12月1日
プロフィール

*へもへも*

Author:*へもへも*
『狼陛下の花嫁』の二次創作小説がメインです。

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